エルミルズ

Ermilze

雰囲気・景観

山に囲まれた盆地の中央に、
古い石積みの城塞と市街が静かに収まっている。
城壁は高く、門は重い。

街路は整い、石畳はよく補修され、
建物の外観も端正で清潔感がある。
しかし、どこか色が薄く、
祝祭や喧騒の痕跡はほとんど見られない。

夜になると、街は早く眠る。
灯りは必要最低限だけが残り、
暗闇は恐怖ではなく、秩序の延長として受け入れられている。

ここでは、
声を荒げる者よりも、
沈黙を守る者のほうが信用される。

地理・環境

ジェゼム伯爵領中央部、山間の盆地地形に位置する。

周囲はなだらかな丘陵と針葉樹林に囲まれ、
遠望は利くが、迂回路は少ない。
主要街道は必ずエルミルズを経由する構造になっており、
通過点でありながら、滞留を許さない立地である。

気候は冷涼で乾燥気味。
朝には霧が溜まりやすく、
昼前には必ず晴れる。
農業には不向きだが、
防衛と統治には適している土地とされる。

歴史

■ 伯爵領首都としての成立

エルミルズは、
ジェゼム伯爵領が「調停役」として確立された時代に、
意図的に選ばれた首都である。

外敵に備える砦ではなく、
商都でもなく、
宗教都市でもない。

「争点にならない場所」として、
この盆地が選ばれた。

■ 分裂の抗争以後

分裂の抗争以降、
エルミルズは一貫して
どの派閥にも深入りしない姿勢を保ってきた。

軍は最小限。
宗教は公式だが抑制的。
交易は許可制。

その結果、
戦火も革命も起こらなかったが、
同時に、
何も決着しない都市となった。

産業と交易

エルミルズ自体に、
目立った生産力は存在しない。

役割は、
周辺地域――
港、鉱山、森林、街道――
から集まる物資・情報・人を
選別し、滞らせ、流すことである。

公的な商会と市場が存在する一方、
裏では密輸・横流し・非公式契約が
静かに機能している。

特産品としては、
石彫・装飾細工・文書整理・契約代行など、
「形のない価値」を扱う仕事が多い。

統治と権力構造

名目上の統治者は、ジェゼム伯爵。

しかし実態としては、
以下の勢力が均衡状態で並立している。

  • 伯爵家と政庁官僚
  • 北部貴族派閥
  • 商人・職人ギルド
  • 密輸組織《灰眼の誓約》
  • 宗教勢力(聖堂・巡察者)

法は存在するが、
適用されるかどうかは状況次第である。

宗教

公式には、
聖カスバート正統教会の聖堂が存在する。

だが、信仰は静かで、
説教は短く、
奇跡は期待されていない。

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