ベラマール

Belamar

青灰の山風が吹き抜ける宿場都市

ベラマールの雰囲気・景観

ベラマールの景観を形づくるのは、
青灰色の山肌、白い石壁、赤茶色の瓦屋根、そして緑深い川の流れである。

朝は冷気が街を包み、
水晶職人の工房から響く澄んだ小槌の音が谷間に反射して広がる。
昼は乾いた山風が市場を通り抜け、チーズの匂いと焼きパンの香りが漂う。
夕刻が近づくと日光が山脈に遮られ、街は早い時間から薄暗くなり、
窓に灯された炎が一斉に輝きはじめる。

街道沿いには旅人のための宿が並び、
荷馬車を引く商人、山羊を連れた青年、
水晶細工を売る露天商が絶え間なく往来する。

山からの風の強さゆえに、街の旗は常に揺れており、
そのためベラマールは「風の宿場」と呼ばれることもある。

地理・環境

ベラマールはディング半島の中腹、急峻な山地へと入る手前の「山岳入口」に位置する小都市である。
標高はやや高く、海風はここまで届かず、代わりに山から吹き下ろす冷たく乾いた風が一年を通じて街を撫でる。
街は大河沿いの段丘に築かれており、川の透明度は高く、水は冷たく澄み、飲用にも適している。

川沿いの段々地形に合わせて家々が階段状に並び、
山脈の青灰色の影が街路に濃い輪郭を落とす。
朝方には川面から薄い霧が立ちのぼり、
都市全体が白いベールをまとったように霞む。

周囲の丘陵と山麓は鉱脈に富み、水晶・銀鉱石・硬質石材が採掘され、
ベラマールはそれら鉱物が平地へ降りていく最初の中継地となっている。
また、崖沿いには小さな野生の白い花が群生し、
風が吹くと花弁がひらひらと石畳に舞い落ちる。

成り立ち・歴史

ベラマールはもともと、山岳民と平地商人が取引を行う「宿場町」として発展した。
古い木製の荷綱、岩壁をくり抜いた倉庫、急斜面に沿って伸びる階段道など、
創成期の姿を今も色濃く残している。

白きディング族が王権を確立した後、
山岳交易路の安全を確保するために、ベラマールには小規模な守備隊が常駐するようになった。
しかし、王都マリナールほど政治色は強くなく、商人ギルドと職人組合の方が街では影響力を持つ。

とりわけ鉱石の選別、加工、輸送を管理する「水晶加工ギルド」は
ベラマールの経済基盤そのものであり、
ギルド長の意向が街の運営に反映されることも少なくない。

文化

ベラマールの文化は、山岳民の素朴さと商人都市の実務性が混ざり合った質実なものだ。

工芸文化
・水晶細工:透明度の高い原石を使った装飾品、魔具の台座、儀礼用の宝珠
・鍛冶:山脈由来の硬質鉱石を加工した工具・刃物
・木工:崖沿いの森の硬木を利用した家具や削り細工

食文化
山脈の恵みを使った素朴で力強い料理が多い。
・白いヤギ乳のチーズ
・焼きパンと香草バター
・山菜と川魚のスープ
・果実酒と微炭酸の山葡萄酒

気質
旅人に対しては比較的親しみ深く、
困っている者には食事をふるまう伝統が残る。
一方で、鉱石の値付けや取引においては非常にシビアで、
「ベラマールでだまされた者はいないが、得をした者も少ない」と言われる。

宗教

ベラマールでは特定の大聖堂は存在しないが、
いくつかの小祠が街に点在する。

最も参拝者が多いのは、
山風の精霊を祀る「青風の祠(せいふうのし)」で、
旅の安全と山道の加護を祈る者が多く訪れる。

また、水晶加工ギルドはその成り立ちから、
地母神チャウルラへのささやかな奉納儀礼を受け継いでおり、
水晶を磨く前に一粒だけ祭壇へ供える慣習がある。

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