ルサイラ

Lusaira
ルサイラの雰囲気・景観
ルサイラの景観は「静けさ」と「文様」で彩られている。
昼間は、
高い樹冠から差し込む光が、揺れる葉に遮られて複雑な影を落とし、
文様を描いた住民の肌が淡く輝く。
太鼓と笛の緩やかなリズムが森の奥から聞こえ、
湿った土と花の香りが空気を満たす。
夕刻になると影はさらに深く、
家々の隙間から焚き火の燈がちらりと漏れ、
文様はより鮮やかに光を反射する。
人々は言葉少なに動き、
彼らの動作はまるで森の精霊たちが歩いているかのような静謐さを湛える。
夜には、
村の中心にある石の円環に火が灯され、
文様をまとった人々が、
ゆっくりと、一定のリズムで円を描きながら歩く儀礼が行われる。
太鼓は低く脈打つように響き、
森の影は祭りに参加するかのように揺れ、
人と精霊が境界を越えて交わるような神秘的な光景が生まれる。
地理・環境
ルサイラはカーボ・レオンからディング半島の内陸深く、
濃密な熱帯林に覆われた山間に存在する"島の民"たちの隠れ里である。
周囲は高い樹冠が陽光を遮り、森の地表は常に薄い影と湿り気に満たされている。
気候は温暖多湿で、雨量が多い。昼間でも森の奥は薄暗く、
木漏れ日が細い金の筋となって地面に落ちる。
街は森と共に生きるように造られており、
大木の根を避けるように小径が通り、
高床式の木造住居が不規則に並ぶ。
住居は太い柱と軽い壁材で作られ、
壁面には染料で描いた文様が刻まれている。
森の奥には薬草や希少植物が豊富に自生し、
湿った土と花の甘い香りが常に漂っている。
夜になると、発光する苔や小さな虫が青白い光を放ち、
森全体が静かな輝きに包まれる。
成り立ち・歴史
ルサイラは、「島の民」と呼ばれる古い血統の人々が、
王権の影響から距離を置くために森へ退き、
自給的な共同体として築いた村である。
彼らは古代からの精霊儀礼を守り、
文字よりも身体と文様による伝承を重んじてきた。
ディング王国の成立後、
王権はルサイラを正式な領内と認めつつも、
その独自文化にはあまり干渉しなかった。
理由は、森が深すぎて統治に労力がかかることと、
ルサイラの住民が外圧に対してほとんど抵抗しない代わりに
文化への干渉を一切許さなかったためである。
近年では外来商人が密かに訪れ、
染料、薬草、木工品を求めて交易を行うこともあるが、
あくまで村側が認めた者だけが訪問を許される。
島の民



島の民は独自の文様文化を持つ少数民族で、白い肌の人種と南洋民族系の人種の両方が存在している。
おそらく南洋民族系の人種はこの集団に後から混ざったものと思われる。
肌の色による区別はなく、ほとんど男女の役割の差はない。狩りと採集を主とする生活をしている。
村の外から入ってくる人に目を伏せ音を聴こうとするのは歓迎の態度であり拒否ではない。
逆に目をあけてじっと相手を見る場合、微笑んでいても警戒の態度の意味になる。
文化
ルサイラの文化は、「文様」「音・声」「自然」を中心に構築されている。
● 文様文化
住民の肌に描かれる文様は、
祈り、記憶、家系、役割を示す象徴であり、外見的な飾りではなく「生きた言葉」である。
光に反射すると淡く輝く特殊な染料が使われており、儀礼時にはその輝きが一層強くなる。
● 音と舞踊
島の民の間に伝わる不思議な音程の合唱がある。これは群島部にも同じ和声が見られる。
太鼓、笛、木の枝を束ねた打楽器など、自然物を利用した音が多用される。
舞踊は跳躍よりも「静かな歩み」を基本とし、森との調和を最も重んじる。
● 薬草と工芸
・薬草処方(解熱、癒し、幻視)
・木工(儀礼器具、軽装武具)
・染料(植物由来の鮮やかな色)
外来商人が求める価値の高い製品も多い。
● 生活気質
住民は慎重で観察深く、外の文化に対して寛容ではあるが、
村の内側に入る者には厳しい目を向ける。
静けさを尊び、無駄な言葉を嫌う傾向が強い。
宗教
ルサイラの信仰は、
精霊との交わりを中心とした極めて古い形の自然崇拝である。
● 森の巫女
村の精神的支柱であり、文様と儀式の解読者。
森の気配、風の流れ、動物の気配を読み取り、儀礼の時期を定める。
ドルイドの血統
● 石の円環(サークル)
儀礼の中心であり、夜の火が灯されると精霊が降りるとされている。
文様をまとった者たちがここを歩くことで、魂の浄化と加護を得る。
オーバド・ハイ信仰と重なる部分がある。
● 小川の聖域
森を流れる澄んだ小川には、治癒と浄化を司る小精霊が宿るとされ、
病人や妊婦はここで祈りを捧げる。
● 禁忌
森を尊ぶ信仰のため、大木を無闇に伐ることは重い罪とされる。
また、文様を無礼に扱うことは、共同体への深い侮辱として扱われる。

