ケトゥマ島

Ketuma
ケトゥマ島の雰囲気・景観
セレナイ港を離れ、南部群島へ向かう船に乗ると、
最初に見えてくる島がケトゥマ島である。
旅人の多くは、ここで微かな“違和感”を覚える。
空気は同じ海風なのに、
光の色や人々の佇まいに、どこか大陸とは違う影を感じる。
ケトゥマ島は、南部群島の中でも特異な場所だ。
というのも、この島では 稀に 次のような外見を持つ者が生まれるからである。
- 灰色がかった銀の髪
- 白に近い肌
- 灰青の瞳
島の大半の住民は従来のディング系・南洋系混血が中心である。
この、稀な外見を持つ人種は決して多数派ではないが、
南洋系の人々に交じる彼らとの邂逅は、どこか不思議な印象を訪れたものに残す。
地理・環境
ケトゥマ島は南部群島の“北の門”に位置し、
海流の分岐点にあたる。
● 地理的特徴
島の北側は断崖が多く、外洋からの風が強い
中央は森と丘陵が広がり、クルマティなどの都市が存在
南側は緩やかに開け、港町カルモナへと続く海岸線がある
水は山の湧水が豊富で、清らかな川が多い
森には染色・香木・軽木など島固有の木々が生える
● 気候
風が強く爽やかで、湿度はやや低め
島の北部は曇りがちで、灰色の光が差し込む日が多い
成り立ち・歴史
● 古代ケトゥマ文明
島に残る石環・洞窟壁画・墓所は
現在のディング系文化、南洋文化より遥かに古く、
“色を操る儀礼文化”が支配的だったとされる。
壁画には
- 体に渦文様を描いた人々
- 色をまとった精霊
- 海の底から昇る光
が活写されており、いまの“彩色文化”の原型と見られる。
● ディング王国との関係
ディング王国はケトゥマ島を名目上は支配下に置いているが、
実態は完全自治に近い。
王国は島の呪術師を畏れ、
また島の文化に干渉すると“精霊を怒らせる”という迷信もあり、
軍事・行政ともに手を出していない。
そのため、ケトゥマ島は南海文化圏の中でも独自色の強い島として知られている。
民族・血統
ケトゥマ島以南の島々最大の特色は、住民の一部が
エスト帝国系 × ディング系 × 南洋系混血という複雑なルーツを持つ点にある。
● 外見的特徴
- 白に近い灰色髪
- 色素の薄い白い肌
- 灰色がかった青の瞳
- 長身で細い骨格を持つ者が多い
- 表情や動作がやや静かで“影のある美しさ”がある
南洋の熱帯的な文化とは対照的で、この外見的特徴をもった者は不思議な印象を与える。
● 気質的特徴
- 感情表現は控える。
- 言語は響きが柔らかく、抑揚が少ない
- 儀礼や動作は静かで優雅
- 集団よりも家系や工房を重視する傾向
芸術性と精神性が高い
南洋の陽気な文化とは逆で、
静かさ、精密さ、色より形を重視する美意識を強く持つ。

文化
ケトゥマの生活文化は
彩色(ボディペイント)・仮面・歌・呪術
という四本柱で構築されている。
● 衣装と装飾
衣服はきわめて軽装で、
染料を体に直接描くことが“身支度”とされるほど。
赤=炎と生命
青=水と記憶
黄=太陽と道
黒=死と精霊
呪術師は顔に複雑な面(木彫や樹皮製)を装着し、
儀礼の際には色の煙(香炉の染料)を焚く。
● 芸能
舞踊は儀礼と一体化しており、
手足の動きは古代壁画と同じ形式を保っている。
歌は言語というよりも呟きと呼気を繋いだもので、
聞く者はしばしば“海の底に吸い込まれる感覚”を得るという。
● 食文化
色果(樹液果実)を使った漬物
香辛料魚の蒸し焼き
発酵果実酒「ケトゥマ・ミル」
など、保存性重視の食文化が根強い。
特に儀礼の日には“青い飲料”が作られ、
精霊との同調を助けるとされる。
宗教
● プロカン信仰の扱い
プロカンは外来の“海の大精霊”として扱われるが、
島の中心ではない。
ケトゥマでは
「海の力はプロカン、だが海の色は我らの精霊」
と解釈される。

