セレナイ

Selenai
セレナイの雰囲気・景観
ディング王国半島部の最南端へと続く街道を抜けると、
暖かい潮風に混じって冷たく研ぎ澄まされたような空気が漂いはじめる。
その先に現れるのが、夜光の海で知られる静謐な港町——セレナイである。
夜になると、海面には無数の青白い光が散りばめられ、
まるで星空が海へ落ちたかのような幻想的な景色が広がる。
この“青い海”こそがセレナイの象徴であり、
旅人たちがこの街を「世界で最も静かな奇跡」と呼ぶ理由である。
街では声を荒げる者は少なく、
人々はまるで海の光に同調するように静かで穏やかに話す。
魔術師、精霊信仰者、研究者、巡礼者——
さまざまな“学びと神秘”を求める者たちが、
この街に一時的あるいは永住的に根を下ろしている。
地理・環境
セレナイは南端の岬に近い小さな港町で、
“夜光藻(ルミナ・ポーン)”が大量に繁殖する沿岸地帯を擁している。
日中の海は穏やかな灰青色だが、
日が沈むにつれて海中生物の発光が始まり、
街を青い光で包み込む。
地形は緩やかな段丘状で、
上段には居住区、下段には港と研究所が並ぶ。
街路は白石を敷き詰めた静かな小道でつながれており、
夜になると魔術灯と夜光海の反射光が道を淡く照らす。
風は一年を通して涼しく、
雨は少ないが濃い海霧が発生することがある。
この霧が夜光を散乱させ、
街全体が“青い夢の中”に沈むような夜もある。
成り立ち・歴史
セレナイの歴史は、
遠い昔の“海の精霊崇拝”の時代に遡る。
この地の海には古くから
「魂の光を映す水」「夜の精霊の寝床」といった伝承があり、
少数の巫女と研究者が集落をつくったのが街の起源とされる。
文化
セレナイの文化は極めて静かで、
外界の喧騒とはまったく異なる“内なる世界”へ向かう性質を持つ。
● 衣装と街並み
衣装は軽装で淡い青・灰・白が中心。
装飾は貝殻や夜光加工された石が好まれ、
夜になると衣の装飾が海光を受けて淡く輝く。
街並みは白壁と青布が調和し、
夜に灯る魔術灯は強すぎず、
すべてが“静けさを損なわないように”設計されている。
● 芸術・学術
セレナイには
・魔術学院の分室
・海光研究所
・精霊歌の収集者
・祈祷師
が存在し、芸術と学術が自然と結びついている。
夜光海をモチーフにした絵画や詩、
海霧を取り込む舞踊儀式など、
独自の文化芸術が育まれている。
● 生活と夜の儀礼
住民たちは夜を神秘の時間と見なし、
日没後の街歩きや瞑想を日課としている。
夜には海辺でささやかに歌が捧げられ、
その歌声が風に混じって街中を漂う。
騒がしい祭りはほとんどなく、
静けさそのものを祝福する文化が根付いている。
宗教
セレナイの宗教はプロカン信仰と古い精霊信仰の融合形。
● 海の光の儀礼
主神としてはプロカンが信仰されるが、その解釈は学術寄りで神秘主義的。
“夜光海はプロカンの慈悲の可視化”と捉えられている。
● 精霊信仰の残存
精霊信仰も根強く、海辺の祠には海藻束や貝殻が供えられる。
● セレナイの祈りの形式
祈りは静かで、儀式の多くは囁くような声で行われる。
踊りや歌も、派手ではなく“寄せて返す波”のように緩やかだ。
ここでは宗教は、人を高揚させるものではなく、心を静かに“海”へ導くものとされている。

