王都 マリナール

Marinar
白壁と赤瓦、そして紺の旗が揺れる“王の都”
マリナールの雰囲気・景観
王都の中心街は白石で舗装され、昼には眩しい光が路地を満たす。
赤い瓦屋根が整然と並び、街路には果物の甘い香りと香辛料の香りが混じる。
港町ほど騒がしさはないが、衣装や宝飾、香料を扱う商店が多く、
特に「黄金の斜路」と呼ばれる大通りは夕方になると、
王宮の巨大なドームに反射した光で街全体が金色に染まる。
騎士たちの練兵場、海軍工廠へ向かう工人数列、
王宮前広場に立つ白金の装束をまとった国王と近衛兵たち。
王都の景観は「秩序」「格式」「静かな威厳」で形づくられている。
夜になると街は別の表情を見せ、
蜂蜜色のランタンが灯り、市場広場は果物と香辛料の夜市としてよみがえる。
楽士の奏でる弦の響き、遠くで聞こえる波音、
そして軽く湿った夜風が、王都の夜に柔らかい陰影を与える。
地理・環境
マリナールはディング王国の中央部、海岸線からやや離れた内陸の丘陵地帯に位置する王都である。
海から吹き上げる湿潤な風は街の外郭にある湿地帯で一度冷やされ、王都周辺では比較的穏やかな気候をもたらす。
標高はおよそ180m。周囲は緩やかな白色石灰の丘陵によって囲まれ、防衛にも適していたため、
建都以来、王権の中枢としての地位を今日まで維持してきた。
城壁内には古い水輸送路が複雑に張り巡らされている。
これらの多くは、先住民の「黒きディング」が築いた地下水路を改修したもので、
現在も王都の生活用水を一部まかなっている。
特に王宮地区の地下には大規模な貯水槽が存在し、災害時の備えとして機能している。
港からは数キロ離れているため、潮の匂いは薄く、
代わりに街路には石灰の粉塵、果物の甘い香り、香辛料の刺激的な匂いが満ちている。
王都の北方には果樹園と麦畑が広がり、南には金属工房と海軍工廠へと続く運河が走る。
成り立ち・歴史
成り立ち・歴史マリナールが王都としての姿を整えたのは約百五十年前、
白きディング貴族たちが権勢を徐々に半島へ移し始めた時期である。
もともとは内陸の小さな農耕集落であったが、外洋航路の発展とともに王権が中央集権化を進め、
シーブルや南洋諸島を結ぶ物流の中継地として重要性を増していった。
王宮がこの地に建てられたのは「外洋からの急襲に晒されず、兵と物資を最も効率良く統制できる位置」だったからである。
海風は運ばれるが潮害は少なく、気候は温暖で作物も育ちやすい。
以来、マリナールは政治・軍事・宗教の三権が集中する都市へと発展し、現在のような巨大都市へと成長した。
近代に入ると、商人勢力が台頭したプエルト・カンデラやバルデサールに対抗するため、
王権はマリナールを「秩序と格式の中心」として再整備し、
白い石畳、赤瓦の家並み、紺色の儀礼旗が街を象徴する意匠として定着した。
現在では、王都には五大貴族の邸宅が集まり、
彼らの政治的駆け引きが街の文化や流通にすら影響を及ぼしている。
文化


都市文化は白きディング貴族たちが中心で、彼らは格式ある装飾文化と金細工を、金糸による刺繍をこよなく愛する。
街路には香油や果実の匂いが漂い、夕刻には絹衣と金飾りに身を包んだ貴族たちが王宮前広場に集い、音楽家の演奏を愉しむのが日常だ。
金細工の工房街はマリナール最大の名所の一つで、職人たちは明るい光の射す半屋外工房で精緻な装飾を作り続けている。
港湾区は全く異なる顔を持ち、多民族の商人、運搬船の水夫、そして市場の労働者たちで混雑している。
香辛料、染料、金属、果物、魔法薬――何でも手に入る巨大市場は“王国の胃袋”と称されるほどだ。
移民の多い港湾区では、南洋系やシーブル系の文化が自然に入り混じり、市井の食べ物は濃い味付けと香りの強い料理が多い。
マリナールの文化は、白きディングの貴族伝統と南洋系文化の影響が混ざり合っているが、
王都においては貴族文化が圧倒的に強い。
● 衣装
・貴族:紺と金を基調とした礼装、肩飾りや金細工のアクセサリー
・市民:白布と軽い革靴、果物商や香料商は彩布を身につける
・軍人:紺地に金の獅子紋章(レオン家系)
● 食文化
果実・香辛料・海の幸を使った濃厚な味付けが特徴。
代表的な料理には以下がある。
・柑橘と香草で漬け込んだ白身魚の炙り
・葡萄酒と蜂蜜で煮込んだ肉料理
・香辛料を効かせた焼きパン
・果物とナッツを使った甘い菓子
宗教
マリナールでは 海神プロカン の信仰が王権の根幹にある。
プロカン大神殿は王宮に並ぶ規模を持ち、
神殿に掲げられた紺と金の旗は「王家の正統」の象徴でもある。
その他の信仰としては――
・交易商人が多く参拝する「旅と取引の小神殿」
・学術者に支持される「知識の精霊祠」
・南洋系住民が密かに祈る「潮の母の石祠」
など、多文化的な側面も街に息づいている。

