カスペル

Kasper

地理・環境

カスペルにも聖カスバート教会の建物はあるが、
ペイロア寺院とハイローニアス教会とは距離を置いている。

水と緑と鉄の都、リベール南部を治めているアリアム子爵領の心臓と言われている。
サンア湖から南東におよそ40マイル、湖水を源とする複数の小川が市街を縫う。

地勢:緩やかな丘陵地帯で、水運と陸路の交差点。森と川に囲まれた天然の防壁を持つ。
気候:温暖で湿潤。冬も穏やかで、農業に最適。

カスペルの街の雰囲気

カスペルの街には、あちこちに小川が流れ、木橋と石橋が複雑に交差している。
水車が勢いよく回り、水の力を使った製粉所や織物工房、木材加工場が並ぶ。

鍛冶場では鉄槌の音が絶えず、陶磁器窯からは煙が立ち上る。
市場には新鮮な果実や干しイチジク、素朴な陶器、彩色された木工細工が所狭しと並ぶ。

昼間は賑やかだが、夕刻になると教会の鐘が静かに鳴り響き、
酒場には傭兵と冒険者が集まり、川沿いの通りは油灯の灯火で柔らかく照らされる。

におい
街の空気には、果実の甘い香りと鉄の匂い、湿った石と木のにおいが混じり合っている。

カスペルの都市としての性格と役割

① 農業都市としてのカスペル
周辺は肥沃な土壌で、穀物・果実・野菜の三本柱が領内の食糧供給を支える。

特産:
カスペル・イチジク 川沿いの湿潤地で育つ糖度の高い品種。干し果実としても有名。
ペイロア神殿への供物として使われ、「太陽の果実」と呼ばれる。
大規模な灌漑設備が整い、小川を活かした水車と製粉所が立ち並ぶ。

② 工芸・職人都市としてのカスペル
森林資源を活かした木工・陶磁・染織・金属細工が盛ん。
旧ソゴ村やニースット村から運ばれる木材を加工し、船材・家具・宗教装飾品として出荷。
陶磁器産業は、近郊の粘土層から生まれた「灰釉のカスペル焼」で知られる。 滑らかな淡灰色の釉薬が特徴で、農村の素焼きとは一線を画す。
職人ギルド「緑環会(りょくかんかい)」が存在し、木工と陶磁の生産管理を統制している。

③ 商業・交易の拠点
領内最大の青空市場を持つ。 農産物、工芸品の他、モーデンフェンやリアン方面からの交易品も集まる。
市場は週に三度開かれ、アリアム子爵領全体の物流の要。 川船と陸路の両方に対応する中継港を持ち、税関・倉庫・宿場が集まる。

④ 軍事・政治の中心
アリアム子爵の居城「カスペル砦」が市の北丘に建つ。 石造二重城壁で囲まれ、兵営・厩舎・避難設備を備える。

正規軍の本営:
沼地の怪物(トログロダイト)、反乱テライナ人(ラクエナ族)、密輸組織への備え。

傭兵団の駐屯: 外国人傭兵や冒険者が多数滞在。
常時200~300名が雇用または待機中。

密輸監視:
モーデンフェン~リアン間の密貿易路の取り締まりを担う。 交易路沿いに小砦と関所が複数設置されている。

人口構成

約1,500人~2,000人の都市。都市としてはセームの方が栄えている。

貴族層:
アリアム子爵家とその家臣団。砦および内郭居住。

職人・商人層:
木工、陶磁、染織などの工房主。市街の中心を占める。

農民層:
周辺の村落で農業従事。日中は市場で物資を売買。

傭兵・冒険者層:
治安維持と探索を担う自由民。酒場や宿に多い。

教会関係者:
聖堂、修道院、施療院の職員。教育・医療にも関与。

成り立ち・歴史

カスペルの起源は、アストランド王国成立以前、複数の都市国家が林立していた時代に遡る。
元々は森と川に囲まれた天然の防衛拠点であり、
テライナ人の小集落とアストランド人入植者が協力して築いた小砦が始まりだった。

その後、南方へのアストランド人の移住が加速し、
周囲の肥沃な土地と水路の利便性から、農業集落→市場町→防衛拠点→行政都市と発展。
南方に向かう冒険者も増え、またトログロダイトとの戦闘も増えたことから、
リベール辺境伯領の中でも重要拠点であるとの認識になり、
時のリベール辺境伯はこの地をアリアム家の領地とした。

アリアム子爵家の居城「カスペル砦」が築かれ、
以降、アリアム子爵領の行政・軍事・宗教・交易の中心地として位置づけられていった。

一時はテライナ系住民との軋轢や密貿易の温床となったこともあったが、
統治と物流管理能力の向上により、子爵領の「心臓」としての地位を不動のものとした。

文化

武人文化
 カスペル砦には常時数百名の傭兵が滞在しており、
 広場では模擬戦や槍試合が催される。
 傭兵や冒険者向けの酒場「赤槍亭」「陽剣の舎」などが複数存在。

工芸
 木工と陶磁の職人ギルド「緑環会」によって品質が統制されており、
 宗教施設用の装飾品や上質なカスペル焼(灰釉陶磁)が名産品として知られる。

農業
 周辺の丘陵には果樹園や灌漑水路が広がり、特に「カスペル・イチジク」は供物としても有名。
 干しイチジクに蜂蜜をかけたお菓子「太陽の房」が祝祭時によく振る舞われる。

市場文化
 「光の市」と呼ばれる昼市は、ペイロア信仰と深く結びついており、
 市の中心では司祭が灯明用の油を農民や職人に分け与える風習がある。

宗教

カスペルの人々にとって、太陽の神ペイロアは単なる信仰対象ではなく、
太陽と実りを司る「日々の糧」の象徴である。

教会勢力
 サンストーン聖堂は、軍事的にも影響力を持っており、
 騎士修道会や僧兵部隊を擁する「陽輪騎士団」の訓練地ともなっている。
 最近ではハイローニアス派の戦士修道会も受け入れており、
 ペイロアとの協調体制のもとで布教と治安維持にあたっている。

サンストーン聖堂
 街の中央に位置し、淡黄色の石材と太陽の文様が施された大聖堂。
 広場での豊穣祭や感謝の祈祷の舞台でもあり、町の精神的支柱となっている。

季節の祝祭
 春:発芽の祈り(若芽祭)
 夏:太陽の収穫祭(夏至の光市)
 秋:果実の感謝祭(カスペル・イチジク奉納)
 冬:沈黙の灯明(夜の長き祈り)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です