エンセリウスの石窟

Grottoes of Encelius

●概要

エンセリウスの石窟は、カーラズ公爵領の森林地帯に残る、王国黎明期の宗教・軍事遺跡である。

中心には大地へ垂直に穿たれた巨大な竪穴があり、その岩壁に沿って礼拝所、僧房、治療室、研究室、書庫、武器庫、墓所などが階層状に彫り込まれている。

竪穴は地下深くでアンダーダークへ通じている。石窟は地下勢力の侵入を監視し、地上への道を封じるために築かれた。

●景観・構造

地上部分は深い森に囲まれ、竪穴の縁には崩れかけた石柱と小さな礼拝所が残っている。木々の根が石壁や階段へ食い込み、雨水が竪穴の底へ細い滝となって流れ落ちている。

岩壁には複数の階層が設けられ、細い回廊、岩階段、古い吊り橋によって結ばれている。現在は崩落によって通路の多くが分断され、上層から下層へまっすぐ降りることはできない。

主な区画は以下のとおり。

  • 上層の礼拝所と僧房
  • 負傷者を収容した治療区画
  • アンダーダークを調査した書庫と研究室
  • 武器庫と防衛用の射撃孔
  • 岩壁に広がる戦士たちの墓所
  • 最下層の大礼拝所と「最後の門」

●歴史

エンセリウスは、アストランド王国黎明期に活動したハイローニアスの戦司祭である。

当時、この竪穴からアンダーダークの勢力が地上へ侵入していた。エンセリウスは戦士、聖職者、治療師、書記、石工を集め、竪穴の壁に防衛拠点を築いた。

長い戦いでは多くの者が命を落とした。石窟にはアストランド人だけでなく、森の民、テライナ人、ドワーフなど、共に地上を守った戦士たちが葬られている。

最終的に地下への道は複数の結界と石門によって封鎖された。エンセリウスもまた、最後の門を守る位置へ葬られたと伝えられている。

●戦士たちの墓所

戦死者は身分や出自ではなく、所属していた部隊や共に戦った戦いごとに葬られている。これは「同じ戦列に立った者は、死後も同じ場所を守る」というエンセリウスの教えによる。

遺体とともに納められた武器は折られず、その切っ先を竪穴の底へ向けて置かれている。墓所は下層ほど古く、最深部に近い場所には最初期の戦いで亡くなった者たちが眠る。

一部の墓碑には死者の名だけでなく、封鎖された地下道、地下勢力の特徴、地上へ戻らなかった仲間の名なども刻まれている。

●信仰

石窟の礼拝所はハイローニアスへ捧げられている。

最下層の大礼拝所には、切っ先を下へ向けた巨大な剣の浮彫がある。これは降伏ではなく、地下から来る敵へ剣を向け続ける誓いを表している。

エンセリウスの墓碑には、次の言葉が刻まれている。

我らは闇へ征くため、ここに立つのではない。
闇を地上へ通さぬため、ここに留まる。

●研究と記録

研究室では、アンダーダークの地理、生物、毒物、菌類、地下水、魔成岩、地下種族の言語や宗教などが調査されていた。

残された記録は王国内で最古級のアンダーダーク研究資料であり、学院やハイローニアス教会にとって高い価値を持つ。エンセリウスの記録には、現代では失われた地下道や、現在も活動する地下勢力の情報が含まれている可能性がある。

●現在の状況

上層部はハイローニアス教会によって聖域とされているが、常駐する聖職者はいない。下層は崩落と結界の劣化によって危険な状態にあり、原則として立ち入りが禁じられている。

聖カスバート教会は王国黎明期の遺跡として監督権を主張し、学院は研究記録の調査を求めている。カーラズ公爵家は地下からの侵入を警戒し、ガリウス・カーラズ公の許可を受けた者に限って探索を認めている。

近年、竪穴の奥から金属を打つような音が聞こえ、最下層の結界にも変化が現れ始めている。

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